2010年5月19日水曜日

体に残る「節(ふし)」

節のある動物と聞くと、何を思い出すだろう。ある人は昆虫かもしれない。芋虫かもしれない。ミミズかもしれない。それは、体の頭からおしりへ向かって体を区切っている横線として描かれる。
それら節のある動物を気味悪く感じる人は多い。

しかし、私たち自身の体も「節」がある。そう言われてもピンとは来ない。自分の裸を鏡で見ても、どこも区切られておらず、一枚の皮膚で全身が覆われている。実はそれは、体の中にある。背骨をイメージして頂けるとピンと来るだろうか。背骨は椎骨と呼ばれる骨が縦に連なり、個々の椎骨の間に軟らかい組織が挟み込んでいる。ここだけを見たら、まるで節足動物だ。節足動物はこの節の内側に筋肉を詰め込んでいる。私たちはこの節の外側に筋肉をまとった。彼らと私たちは表裏を分けた関係だ。

そう言っても、体に横線のある芋虫やミミズのようではないと思われるだろうが、運動の為に特殊化した腕と脚を想像で取り除いてみると、残された胴体には横線があるではないか。それは、脂肪が少なくてほどよく鍛えた腹部に見られる。腹筋の横割れ線こそ、芋虫の横線と同じだと言うと悪趣味だろうか。とは言え、背骨を初め、胴体の背中の深い筋肉や肋骨の連なり、腹筋の割れなどは体節と言って、ボディプランの古いデザインがそのまま継承されているのは事実だ。

では、頭はどうだろう。頭に横線がはいってグネグネ蠢かれたらさぞホラーだろう。実際、外見で頭部に分節性を見いだすことは不可能だろう。しかしながら、中に収まる大事な器官「脳」には、分節性をにおわす構造が見て取れる。進化的に見ても、体が出来て頭が出来るのだから、体が持っている分節性を改変させて頭を作ったと考えることもできる。
頭を構成する様々な器官は、かつて魚のエラであったものを作り替えている。エラは数対あったわけだが、それも分節性を物語っていると言える。

お尻の先には、3つか4つの尾っぽの骨が残っている。骨と骨の間に横線を描いて。
頭の先からお尻の先まで、私たちは体の中にフシを隠し持っている。