優れた芸術は、押し並べて調和を保持している。それは色彩であったり、音階であったり、陰影であったりと表現領域によって様々であるが、必ず調和をもって成り立っているものだ。これを、私たち鑑賞者は言葉に出来ない心地よさとして認知し、それを「すばらしい」と表現する。つまり、作家でなくとも調和の心地よさを知っている。それを良しとする能力をそもそも持っているのである。
それは、生命体として今まで生きながらえてこられた経験がそのような感情としてわき上がらせるのかも知れない。ある生命体はそれを取り囲んでいる環境との調和が保たれていなければ淘汰されてしまうからだ。生命誕生から35億年の長きにわたり続いてきた生命の流れ。これまで、無数の生命が調和を保てずに絶滅してきた。いま生存している生命体は、その意味で調和のバランスを保てている成功者であり、長く存在を許された「命のヒット作」とも言えるだろう。
調和を美とする私たちは、そうしながら、今まで生きながらえてこられた自分たちの潜在能力を讃えているのかもしれない。
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