2016年8月10日水曜日

Appleの商品デザイン

 アップル社の商品が持つある種の潔さは、日本人にとって新鮮でもある。iPhoneやMacBookなど革新的な商品とサービスを作るが、その一方で、MacBookの充電ケーブルはプラグ部品のフックを持ち上げてそこにぐるぐると巻き付けさせるという「アナログ」さを持つ。これが日本製品だったら、この案は採用されないと思う。巻き付けさせるにしてもそれを見せないようなカバーが付いていたりと、何かもう一段階のお飾りが加えられているだろう。iPadも革新的商品だが、その保護カバーは「ゴム製シートで覆う」というアナログさである。使う時はそれを裏側へとめくり返す。ペラペラとしたシートは視覚的なチープさがあって、これも日本製品だったら却下されてしまうアイデアだろうと思う。Microsoft社のタブレットはそういうところがより日本製品ぽい。

 しかし、よくよく考えてみると、アップル製品が持つ革新性は”より直感的に”という目標に向かっているのであって、なにも非日常的なクールさといったデザインされた格好良さだけを目指しているのではないことがわかる。iPhoneやタブレットのハードウェアのシンプルさは、その方が(ハードウェア的拘束から離れることによって)もっと便利で直感的な物にできるからだ。アナログなコードの巻き付けも、それが最も直感的で簡単だから採用されたのだろう。「風呂の蓋」と呼ばれるiPadの保護カバーも、それが最も軽量でシンプルなのだ。

 こうやって見ると、アップル商品はデザインのためのデザインではない事がわかる。対する日本的は製品は、デザインのためのデザインが多い。家電や自動車はそれが際立っている。時には見た目の良さのために使いやすささえ犠牲になっている。日本人は形に機能以上の重要性を見出す気質があるとも言える。形もまた機能と同等に捉えるとも言い換えられる。

 ともあれ、iPhoneやMacBookなどは、機能と形(デザイン)を高度に結び付けた点(更にそれをセールスポイントとして積極的に提示する点も)が従来になく新しかった。機能は機能、形は形と別々に進んでいるように見える日本商品に慣れていた私にはそれが衝撃的だった。アップル社製品に見られる商品開発デザインの方向性の元となる気質は、民族性や文化性など、より深い気質の違いが関係しているのだろうか。

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