公園の水飲みを器用に使うカラスが話題になっている。付近では知っている人が多いようで、以前からしばしば目撃されていたようだ。それを鳥類学者が調査して、これは確かに賢いというので発表したところ今回の評判となった。カラスが賢いというのはよく知られているが、学者曰く水の量までコントロールするのは相当なもの。映像で見ると水飲み用の上向き水道の栓を嘴で少し回して数センチ水を出し、そこに嘴を付けて飲んでいる。次は栓を更に回し噴水のように水を出して水浴びをする。楽しそうだ。少し前には駅の自動券売機で切符購入の振りをするカラスも話題になったが、学者曰く、これは飼いカラスが真似遊びをしているのであって、今回の野生カラスの行動とは本質的に異なると。
何が賢くて、何が賢くないか、それは捉える側の判断で異なってしまう。券売機のカラスはもちろん“電車に乗るために必要な券を購入しよう”としていたのではなく人間の行為を真似に過ぎない。つまり、行為と目的が一致していない。水飲みカラスは、それが一致している。だからこちらが賢いのだと言う。しかし、水飲みカラスの“栓回し”もおそらく人間の行為を真似たのだ。こちらは、「栓を回す、水が出る」と行為と結果が単純である。結果としての水の“使用目的”はカラスはすでに知っている。つまり、これは飲むもの浴びるものだと。対しての券売機を使う理由と使いかたを理解するのは、単に機械のボタンが押せたところで理解できるものではない。行為と目的の複雑さが比較にならない。仮に券売機ではなく、タッチディスプレイを押したら水が出る機械だったなら、モノマネ券売機カラスもおそらく水を出して飲んでいただろう。
公園の水飲みなど一度も見たことのないカラスが今回の行為に至ったのなら、それは相当な知性を感じさせる。また、このカラスが飛び立つ前に栓を閉めているなら、それも知性的である。しかしそれはしていない。当然である。カラスは水道水に料金が掛かるなど知らないし税金も払っていないのだから。人間でも2~3歳の幼児では水道をうまく使えないと言っていたが、幼児は自分で水道を使う必要がそもそもない。
人間の作った道具を操っているから高度、なのだそうだが、カラスが自然物と人工物を区別している訳でもない。私はむしろこう言ってほしい。我々が知性的だと信じていた行為が実はカラスができる程度のことだったと。
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