2017年10月1日日曜日

「Treasures from the Wreck of the Unbelievable 」展の図録を見て


 ダミアン・ハースト「Treasures from the Wreck of the Unbelievable (難破船アンビリーバブル号の財宝)」展の図録を見て衝撃を受ける。ヴェネツィアで実際に観てきた学生のもので、巨大な図録の書籍だ。作品の内容、個々の作品のクオリティと点数、その全てが壮大で、更にはそれらが立体作品であることから、彫刻芸術として区切って見ても、間違いなく今世紀で最も優れた展覧会の1つだろう。実物を目撃できた人がうらやましい。

 世界中の多くの作家、彫刻家がこの展覧会を羨望と嫉妬の眼差しで見ることだろう。同時に、大きな希望も与えるはずだ。その壮大さと、綿密に組まれた構成とアイデア、そして何より作家の個性の純粋性の高さに突き動かされた行動力によって成し遂げられた膨大な作品群からなる展示は、作家個人のアイデアが芸術表現の動向さえ変えうる様な力を持つことを証明している。さらに、芸術家に勇気を与えることは、頭に浮かぶ個人的な視覚的想像が形を得ることで、これ程までの力を持ち得るという事実の提示である。

 このレベルの展覧会を実現させる事は誰でも可能ではない。しかし、誰もできないではなく、誰かはできるということの実証の価値は大きい。芸術家の自由な感性は力を持ち得る。そこに形を与え、それも出き得る限り完全にする事で、作家個人を超えて他者を動かす行為へと変換されるのである。
 ハースト氏は自身が抱く際限の無いイメージに形を与えた。単純だがそれこそが、造形芸術家、視覚芸術家に取って唯一かつ絶対の果たすべき行為であることを実証してみせたのである。

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