12月3日(日)に新宿美術学院にて、美術解剖学特別講座を開講します。
実習形式で、油土を用いて手を骨から造形していきます。皮膚はまとわせません。
手は、運動器が”身体を運ぶ”働きから解放され、マルチツール化したものだとも言えるでしょう。私たちの身の回りにあるほとんど全ては、この手によって動かされ変形された物です。手は最も鋭敏な感覚器であると同時に、脳内の想像物に形を与えるための出力器なのです。
どのようにして指は動いているのでしょうか。ロボットのように関節毎にモーターが仕込まれているわけではありません。指や手首の曲げ伸ばしは、紐のような腱によって引っ張っているのです。それはマリオネット人形やワイヤーで動く自転車のブレーキに似ています。更に、親指と人差し指で小さな物をつまめるように、親指を根元から小指側へ倒すための筋肉が手のひらにあります。同様の筋は小指にもあって、そのお陰で親指と小指の腹同士を触れさせることができます。これら、指の”対立”は手の機能上最も重要ですが、その形状においてもまた重要だと言えます。手のひらの親指と小指側にある特徴的な膨らみは、この筋肉によってできています。
手は、造形的観点に基づく構造から言えば、骨格と腱で大枠が作られ、手のひら側だけにある筋が独特な曲線的な印象を与えています。一方、筋のない手の甲側ははるかにごつごつして直線的です。
微細な動きが可能な手は、私たちの精神面とも連動して動いています。ジェスチャーやそぶりにおいて手が作り出す視覚的情報は重要です。例えば、手をグーにして人差し指だけを伸ばせば、何かを”指す”メッセージになりますが、これはほとんど世界中の人に共通する視覚的言語だと言えるでしょう。
音声を発しない絵画や彫刻などの視覚芸術では、全身のポーズや表情に加えて、手の姿勢が重要です。人体が表現されている殆どの作品において、手は何らかのメッセージを伝えるための手段として用いられているのです。
この講座では、表現された手を通して、その伝達ツールとしての働きを改めて確認し、続いて粘土を用いて構造を自作することで、コンパクトかつ機能的な内部配置を理解します。自らの手で手を造形し内側の構造と働きの連動を理解することで、今後の制作に現実的な説得力を与えることができるようになります。
詳細は新宿美術学院のサイトをご覧下さい。
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