2017年9月11日月曜日

東大寺の金剛力士像の建つ早さ

 古い家が取り壊されていると思っていたら、もう新築が建っている。雑草の生い茂る空き地だと思っていた所に、鉄筋のマンションが建とうとしている。建築物の建っていく早さには驚かされる。道路際で目にするのは、様々な建築材料が組み上がっていく様だけだが、そのように作業が動き出すまでに、紙面上で綿密に手順組みが成されているのだろう。実際に建設が始まると、現場ではできる限り無駄なく進行するように考えられているに違いない。

 ふと、東大寺の8メートルを超える金剛力士像が2ヶ月ほどで作られたという話を思い出した。具体的な日数と共に語られるのだから、そこには”信じられない”という感想と共に運慶らの並ならぬ技術力を裏打ちするものである。しかし、一流の仏師集団であることを考えれば、それは特段に驚くべきことでもない。金剛力士像は、類のない巨大さではあるが、その姿形はゼロからの創造ではなく、従来からの型からのアレンジである。職業として考えれば、理由がなければ完成を遅くさせる理由はない。綿密に組まれた設計図と、手慣れた職人がいれば、数ヶ月で家やビルが建つように、巨大な像を数ヶ月で建造することも普通に可能だったはずだ。金剛力士像の造形においては、彼ら仏師たちにとって、その大きさだけが問題だった。吽形は、首の角度を変えたり、乳首やヘソの位置を変更した跡が見られるという。組み上げた巨像を見上げたときに、その視覚的な歪みなどに気が付いてのことだろう。そういうところに、巨大さとの格闘が感じられる。

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