2回目の「レオナルド×ミケランジェロ展」に行った。今回は閉館1時間前を切っていて、満足するほどゆっくり見られなかったが、館内はガラガラで、1つの作品を1人で鑑賞する贅沢さがあった。今回は近距離双眼鏡を持参して、これが大活躍だった。これで見ると、肉眼での鑑賞との情報量の差が凄まじく、鑑賞が数倍楽しくなる。
看板作品になっているミケランジェロの素描では、紙葉の左下にペンの試し書き線が2つある。それが始まりのカーブが逆向きで、もしかしたら1つがミケでもう1つは弟子が真似したのではないか、などと想像して楽しい。レオナルドの看板作品の素描は、サイズが小さいので、肉眼では拡大印刷されているもののようには見えない。これも双眼鏡を使うと、1本1本の筆致がハッキリ見える。左頬には白色でハイライトが入れられているのだが、それだけではなく、修正でもしたようなシミがそこに見られる。
最も鑑賞に時間を当てたのは、ミケランジェロのワックスモデルである。肉眼で見ても素晴らしいが、今回、双眼鏡を使うことで、目の前に等身大ほどに拡大された彫刻があるかのように鑑賞することができた。像の右大腿部や左の腰部などに、指紋がはっきりと残っている。ミケランジェロの指紋である!指でしっかりとワックスを押し込んだことが分かるし、指紋が残るほどに柔らかい状態で造形したことも伝わってくる。また、背中の辺りには、ヘラで付けたような段々のへこみがある。他には、肘を突いている右腕の付け根、つまり肩のところは、ワックスを伸ばしてなじませた跡が見られる。胴体とは別に腕を造形して、それを接合したのかもしれないし、造形過程で割れて取れてしまった腕を再接合したのかもしれない。また、背中には背骨にそって溝があるのだが、溝の底が鋭利である。双眼鏡で見ると、爪痕が溝の底に沿って残っている。腹部側の造形の細かさと比べると背中は若干荒さが残るのも興味深い。
横向きで、右脚の付け根を下にした横向きの姿勢だが、胸郭から肩にかけて大きく回転運動しており、左肩は前方(腹部側)へ覆い被さるように傾いている。この捻れは写真や画像では全く伝わってこない。全身が作り出す大きなねじれの運動が素晴らしい。斜め後ろから見ると、腰の前傾は、腸骨陵の上の外腹斜筋の膨らみも同一の量塊として捉えているように見えた。脚は左脚の大腿の造形が素晴らしい。膝に来ると粗付けだが、膝下部分の大きな形の捉え方はかえって分かりやすい。それはスネの前縁を強調するような形の捉え方である。
実に、この小さなワックスモデルは、サイズを超えて、ミケランジェロ彫刻の要素を直接的に伝えてくる。この展覧会で、彫刻家ミケランジェロの真髄が最も伝わるのが本作品である。「Divine」な造形とはこれを言うのだ。
あと1週間ほどでこの展覧会は終わってしまうが、もう一度、時間を作って見に行きたい。
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