2009年5月18日月曜日

作品の価値とは(ムア作品盗難事件)


ヘンリー・ムアの彫刻が、2005年に盗まれていたとは知らなかったが、それが、イギリスのマッチハダムの庭園の物と知ってまた驚いた。イギリスに限らず、欧米は芸術作品の展示が大らかだ。日本のようにガラスケースや囲いなどで覆ったりしていないことが多い。それが可能になるには、鑑賞者がそのものの価値を理解しているという前提があるからだ。それを逆手に取ったような事件は、残念ながら時々起こっている。結果、イタリアのミケランジェロのピエタもそれが原因で今では強化ガラス越しに見るしかないし、ダヴィデも柵がつくられ距離があいてしまった。

ムアの作品は屋外に展示されていたものだが、長さ3.6メートル、重さ2.1トンだそうで、普通は盗まれるとは思わない。犯人は3人で、クレーン付きトラックで犯行に及んだそうだ。その作品だが、溶解して地金にされ、中国に渡ったらしい。確かに日本でも、数年前は町の金属の盗難が増えて、それらは中国に売られると報道されていた。
作品としての価値が4億3000万円。それが、地金として22万円だそうだ。犯人は、初めから作品を芸術としては見ずに、銅として見ていたのだろう。これは、英国人の仕業だろうか?ムアは英国の誇る世界的芸術家だ。それを、同国人がはした金欲しさに、自国のプライドに泥を塗るような、こんな低俗な犯行を企てるのだろうか。

さて、このニュースで、幾つか興味深いことがある。約22万円というが、2トンのブロンズがその価格なのだろうか。銅地金は安いとは聞いた事が有るが、それほどなのか。
素材で見るか、題材で見るかでこれだけ価値の開きがあるとは、価値について再考させられる。

ともあれ、残念である。せめて、原型が保存されていることを願う。

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