2014年2月25日火曜日

Love is art. Struggle is beauty.

 刻家、荻原守衛の言葉。

 私はこう見た。
 まず「愛は芸術」だが、ここにある2つの単語が指し示す対象は幅広い。愛と一言で言っても異性へ向けたものから母性愛、さらには人類愛のように大きな対象まで含む。芸術もまた同様に様々な様式や技法の芸術から、職人技術や特殊技能までも含み得る。そう考えると、これは限定的な対象を示していると言うよりも、固定された全体つまり普遍的価値を指し示した言葉であるように思える。
 対する「もがき(相剋)は美」は、より動的だ。もがきはその状態の渦中を示し、美はその状態において見出されると言っている。ここでのもがきは、肉体的でなく精神的なそれである。
 つまり、「相剋の渦中にあってそこから解放されようとするとき、そこには希望が内在している。囚われつつも望みを持って立ち向かう様には美しさが見出されよう」との意である。

 また、2つのフレーズに対応関係を見ることもできる。すなわちLoveはStruggleと、ArtはBeautyと。そして、始めのフレーズが理想の到達点であり、後のフレーズはそこに至る過程を示す。愛に至るには相剋があり、芸術となるには美が必要なのだ。

 単純な言葉で構築的に組まれ、その意は相似と対極とを組み合わせている。そう見ると、この言葉はまるで彫刻だ。事実この言葉をそのまま造形したような作品「女」を最後に残して、荻原守衛は31歳を前にこの世を去った。1910年のこと。