2017年7月25日火曜日

「レオナルド×ミケランジェロ」展の感想

 先日、「レオナルド×ミケランジェロ」展へ行った。当日は、仕事の合間、前夜睡眠不足、猛暑日など重なって疲労感を感じつつの鑑賞だった。もう一度、万全の体調で鑑賞し直したい。それ位思うほどには良い展示だった。

 ポスターにもなっているメインの素描2点が、入ってすぐに展示されていて驚いた。メイン以外も良い素描が多く来ていた。裏テーマ(?)のパラゴーネ、すなわち絵画か彫刻かという比較競争も随所で感じられる。私にとって最大の期待であったミケランジェロ作のワックス製マケット(試作彫刻)は素晴らしかった。今は現代なのだから、これをデジタルスキャンして拡大出力して展示するくらいの事をして欲しい。スキャンデータの権利やら維持やらで面倒なのでやりたがらないかも知れないが、いつか誰かがやるだろう。


 展示の中盤過ぎ頃に、真横から描かれた女性の肖像画が飾られている。これと言って素晴らしいわけでもない。なぜ、この絵があるか。実は、もう1枚別の絵が展示される予定だったのだが、中止になったのだ。それは、図録を買うと載せられている。図録を作成した段階では展示予定だったことが分かる。土壇場での中止だったのだろう。現場は慌てただろう。中止された絵は、数年前に世界的ニュースになった『美しき姫君』で、レオナルドの真筆画ではないかとも言われている。何より状態が良い。そうか、この展示の当初の企画では、この絵がメインだったのだろう。展覧会メインの作品は通常、途中に置かれることを考えても納得がいく。この絵が来日していれば来場者数は増えていたことだろう。何せ綺麗で、分かりやすい。

 私は『美しき姫君』はレオナルドの真筆画ではないと思う。確かに綺麗で上手な絵だが、レオナルドの表現指向とは違うように感じる。これに限らず、レオの絵、ミケの絵、と言われているものの中にも実は違うものが混在しているはずで、そんなことを勝手に考えながら見ていくのもこの展覧会では楽しいかも知れない。実際、ミケ帰属とされる素描の幾つかは、非常に疑わしい。工房の弟子に練習させたような素描も幾つか混ざっているようだ。

 最後に置かれている大理石のキリスト像は、残念な作品だ。ミケが途中まで作成したものだろうと言われている。全身の比率、広い胴体、そして手足の指の表現などはミケらしさが感じられるので、そうなのかも知れない。特に右手の手首から指先までが最もミケっぽく思う。しかし、仕上げがいけない。表面はさざ波だって緊張感が無く、水に濡れて溶けた石けんのようだ。その顔はまるで置物彫刻である。

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