ヌードを見ていると、身体の美しさに男女の差はないことを実感します。むしろ、構造美を楽しむなら男性のほうが良いとも言えます。古代ギリシアから多くの男性ヌード彫刻が作られたのも、その美しさが認められていたことの証でもあるのでしょう。
さて、私の講座は3回セットです。残念ながらこの限られた時間内では、膨大な人体構造に関する情報を伝えきることはできません。ですので、モデル・セッション中に、注意を向けて欲しい部位を私が説明し続けるというかたちを取っています。
講座を連続的に受講されている方も複数いらっしゃいます。その描写が平面的なものから構造的で説得力のあるものに変化しているのを拝見して、美術解剖学が持つ「構造視」の効果を実感しました。
人体の形はすべて意味があります。それを造形的視点から組み上げていったものを美術解剖学と呼んでいます。それは医学解剖学の知識を得ることで非常に詳細に語ることができるようになっています。構造を読み取りながら造形する作業は、それまでの「いきおい」や「感覚」でのそれではなく、詳細な観察と論理的な組み立てを要求しますが、その結果としてとても説得力のある実在感を作品に与えてくれるのです。
来年、2014年の1月18日(土)から、再び新しいタームが始まります。次回のモデルは女性です。ヌードと言えば女性のイメージがありますが、形を捉えるという視点で言うならば実は男性より難易度が高いのです。それは少ない筋量と多めの皮下脂肪によるものです。しかし、脂肪によってなだらかにされた体表にも、しっかりとその深層の構造が大きな形として影響を与えています。体表に現れる目印(ランドマーク)や共通する起伏などを知ることで、深層構造を捉えることができるようになります。
人体描写が得意という方はとても少ないはずです。その難易度、ハードルの高さが”解剖学の応用”という手段を生んだのです。人体を表現している多くの西洋古典の巨匠たちもそうしてきました。ならば、現代の私たちも使わない手はないのに、そう思いませんか。
本講座は終了しました