2015年11月1日日曜日

ヒトゲノム31億文字の書

 でたらめなギリシャ文字などが延々と続いている高額な書籍の一群が国会図書館に納品されたというニュース。その要点は、規定に従って出版者に支払われた100万円を超える額を巡って、図書館が調査を始めたというもの。

 このニュースを見て、私自身のあるアイデアを思い出した。それは、ヒトゲノムの全塩基配列を印刷した書籍を作るというもの。
 ヒトゲノムはATGCの4文字の羅列が約31億文字続く。それだけの情報が私たちの体の全ての細胞内に収められている事実は驚きだが、その数と細胞のサイズから、実感としてピンと来ない。だから、それをシンプルに並べて印刷して、私たちにとっての情報元の身近な形である書籍に置き換えれば、実感できるのではないだろうかと考えたのだ。

 これはしかし、誰でも思いつくような内容なので、自分が作るまでもないだろうと、今回ググってみるとやはり引っ掛かった。しかも、その内の1つは日本の東大博物館のものだった。別のものはイギリスのウェルカム財団のコレクションのものらしく、それは1つの書棚に収められていて、一冊の大きさが百科事典ほどもあるものが実に100巻以上のボリュームになっている。タイトルは1から22までとXとY。何だかこの写真を見て、31億という数の大きさを実感できてしまったような気もするが、これだけの情報が体を構成する60兆とも言われる細胞の全てに収まっていることが相変わらず驚異の感覚を起こさせる。しかも、これは減数分裂したあとの1倍体、つまり生殖細胞におけるゲノム数だから、それ以外の2倍体である体細胞はこの倍数(ATGCがTACGのようになっている)ということになるのだ。

 塩基配列を文字化して体感させる試みはもっとも分かりやすい。けれども、他の表現でも構わないのだから、例えば、ATGCを4色に塗り分けて見せるのも良いだろうし、図形に分けても面白いだろう。音階もしかり。なにせ31億という膨大さがウリなので、塊となったときに何が現れるのかが興味を惹く。一文字づつ部品として作っても面白いかも知れないが、やはり31億という数は恐ろしく、例えば一文字が1グラム(1円玉の重さ)だとしても総計31億グラムで、つまり実に3100トン!これはジャンボジェットが7機ほどの重さに相当する。

 ヒトゲノムの中に、私たちの体の特徴を作り出す数々の遺伝情報が含まれている。それら”意味の分かっている文字列”を、何か別の形で表現し直しても面白そうだ。これらの文字列は特定のタンパク質を作っているわけだが、そのルールを例えば楽曲や料理などに適応してみたらどうなるのだろうか。などと想像する・・。

 ゲノムに限らず、身体を巡る数値はどれも日常のそれと大きく異なる(とても小さいor数が膨大など)ので、ピンと来ない。それらを日常的なものに置き換えると現実味を伴った驚きとして感じられるのではないか。そうして、存在の脅威を実感したいのだ。

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